「アルテミス・ファウル 妖精の身代金」 ファンタジーとSFを合わせたようなダークヒーローもの

「アルテミス・ファウル 妖精の身代金」
著者:オーエン・コルファー

この物語にもし一切魔法という言葉が出てこなかったら私はジャンルをSFと勘違いしただろう。こんなにも科学臭さが香るファンタジーが存在していることに驚いた。

主人公のアルテミス・ファウルはいわゆるダークヒーローである。しかし、その年齢は十二歳であり、普通では悪役に適した年齢ではないのだが、この物語は彼の悪としてのヒーローっぷりを存分に感じ取ることができる内容であった。

アルテミスは妖精を誘拐し、身代金として多量の金塊を要求するのだが、この悪さをする上で彼に悪い奴だなと感じる描写以外になんかクールでかっこよさを感じさせることや十二歳という少年っぽさを感じさせることがとても面白く描写されている。

対する妖精側だが、こちらの描写もかなり盛りだくさんになっている。皆が想像しているというか私自身が頭に固定概念を固めている妖精とは異なる。それにいろいろな種族がいて(それもよく耳にする)、例えばゴブリン、ドワーフやらトロールなどたくさん。ケンタウロスも存在する。

それでこの妖精たちだが、人間たちに地上を追いやられたようで地下で生活しているらしい。そして人間の科学技術を遥かにしのぐ科学技術を持っている。やっぱりSFじゃないかと言いたくなる。そして、魔法と呼ばれるものもちゃんと存在していて、それを扱うには儀式による魔力回復が必要らしい。

アルテミスがこの話の主人公であるが、妖精側にも主人公と言えるキャラクターが存在する。ホリー・ショートとその上司のルート司令官だ。二人は地底警察偵察隊(LEPレコン)に所属している。話の内容からするとLEPは対人間ではなく妖精たちの中の問題を解決する普通の警察のようだが……。

LEPレコンの人々というか妖精たちの描写もまさにSF。ファンタジー感はない。クールでかっこよいといった感じで、おとぎのような感じではない。地下マントルから吹き上げるエネルギーに乗ってマシーンを使って地上に出るなど科学感満載だ。銃器やら化学兵器まで出てくる。魔法は超能力みたいな感じと言った方が良い。

アルテミス側と妖精側の駆け引きというか、やり取りというか、これがとても面白くてたまらない。どっちが主人公でもよい感じだ。じゃあ敵は誰だ? そう考えてみると物語としての敵は別に存在したのかもしれない。例えばルート司令官の邪魔をした奴とか。いや、一番暴れてたのはトロールだな。特にトロールはアルテミス側にもLEP側にも被害をもたらしたし。

アルテミスが金塊を手にしたのかそれともLEPレコンの二人が勝利したのか。それとも、別の何かが笑ったのか。最後の結末はなるほどそう来たかと思った。

アルテミス・ファウルはシリーズものらしく手元にすでに第二弾の方も購入してあるのでそちらも読み進めていこうと思う。単行本が刊行されたのが2002年らしくだいぶ昔の作品だが2021年の今でも十分に楽しめる内容だった。古本屋で見つけたお宝かもしれない。

最後に二つ。ファンタジーとSFの融合みたいだ。
ああ、しまった丁寧語で書くつもりだったのに……。もしここまで読んでくださる方がいらっしゃいましたら、本当にありがとうございました。丁寧語にするとくどくて苦手でございます。ではまた。