「帝都あやかし屋敷の契約花嫁」
著者:江本マシメサ
あやかしと聞くと恐ろしい妖怪を思い浮かべたりもするのですが、このお話では出てくる妖のほとんどが化けて出る動物という点、それらが可愛らしく語られている点、なんだかどちらかというと癒し系妖怪な物語だった。
狸やら狐やら、化け猫やら化け川獺やら……裏表紙の紹介に”もふもふ和風ファンタジー”と書かれていた訳だと思いました。こんなかわいい妖怪たちを呪符で恐ろしい形相にして操っているのが今回の悪役。なんともけしからん。人間の方が怖いじゃないかとさえ思えてきます。
ファンタジーとしてだけでなく恋愛ものとしても面白い作品で、恋も事件もモヤモヤしたものが成程なとどんどん開けていく、そういった楽しさを味わうことができました。
主人公の”まりあ”は強かであり、同じ強かな女性主人公がいたなと「紙の魔術師」のことを思い出した。ぐいぐいとストーリを引っ張っていく感じが私は好きだなと、そう思っているようです。
婚約相手の装二郎はなぜか登場して初めの方はつかみどころがなく、なんか怪しく思えるようになっているのですが、話が進む程にああ成程と納得できました。彼の抱えている家系の問題が今回の物語のキーだと思います。
ちなみに、和風のようではあるけれども世界観?時代背景?としては近代化により西洋のものを取り入れていっている状態にあり西洋建物も出てきたり、さらに主人公がハーフだったりということもあって、重苦しさは感じられませんでした。この点もすごく読みやすさに繋がって楽めました。
ああそうだ実は装二郎も、もふもふなのですよ。なにせ……ここは読んでのお楽しみ。